創造的であるためのコツ

創造的(クリエイティブ)であれ。最近よく耳にする言葉である。少し前は「グローバル人材」なる言葉が教育界でもビジネス界でも頻繁に使われていたが、最近では、「クリエイティブ人材」なる人びとをビジネス界が求めはじめ、呼応して教育界でも注目が高まっている。

背景には、社会の変化がある。これまでは、「問題の特定」は比較的簡単かつ自明であり、重宝されてきたのは「所与の問題を(素早く、効率的に)解くことのできる人材」であった。ところが、最近は、生活必需品どころかそれ以上のモノや情報やサービスが溢れかえっている状況である。現代の先進国では、何かが足りないがために、生活そのものが難しかったり、生命が脅かされたりという状況は起きにくい。万人が共有する「明白な問題」が見えにくい状況では、そのような中でも人類が解くべき「真の問題を深いレベルで発見し解決する」能力が重要となってくる。

ここで重要なのが、創造的な思考である。同じ現象を目にしても、人とは違った視点で物事を捉えたり、多くの人たちが別々に捉えているものごとを結びつけ新たな価値を生んだりという能力である。これから人類が直面することになる問題は、これまでに出合ったことのない「未知の課題」であることがほとんどとなる。そんな時によく使われるのが「ギャップ分析」という手法である。ここでのギャップとは、現在の状態と問題が解かれた状態とのギャップを指しているが、重要なのは「既知の手法で解くことのできる部分」と「創造的な解決が求められる部分」とをきちんと特定して切り分ける点にある。

真に創造的な人とは、何から何まで新しい方法を模索する人ではない。むしろ、全部を自分で解こうとするような態度は、しばしば「自前主義」として戒めの対象にさえなる。創造的な人は、創造的な解決が求められる部分を特定し、集中的に自らのクリエイティビティを注ぎ込むことで、社会に新たな価値を提供する。

もう一つ重要なのは、モチベーションの持ち方である。各種研究で、いわゆる「アメとムチ」型のモチベーションは創造性にマイナスの効果を生み出すことが知られている。大切なのは、その人の中から湧き上がってくる「内発的動機」だという。つまり、「自分の利益のため」にではなく、「より大きな何かのために」という動機から問題に取り組むことが重要だということである。社会のルールは変わりつつある。

Be Creative!

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科教授=松本市)