まわす仕組みをつくる

まわり続ける。まわし続ける。これらのコンセプトは、次の時代を構想する上で極めて重要な要素になる。そもそも、現生人類がこの地球上に住んでいるくらいの時間軸で考えるならば、この宇宙も、地球も、まわっている。太陽系の惑星は、太陽を中心にまわり、地球の周囲を月がまわっている。自然界に目を向けてみても、季節のサイクルも、それに合わせた草木の成長もまわっている。「水の惑星」である地球の水にしても、海から蒸発した水が雲を作り、山に雨を降らせ、川を流れて再び海へと注がれ、また蒸発してという形でまわっている。

まわり続けるということは、「つながり合っている」ということでもある。つながり合うとは、相互に依存しながら「関係性を保つ」ということに他ならない。「お互い様」といったところだろう。こういう関係性は、相互扶助や助け合いを自然と生み出すことになる。それが崩れるようなことがあれば、まわし続けることは難しくなる。

他方、特に近代という時代に入って、人間社会は「一方通行」の仕組みづくりに熱心になった。そのエンジンを動かしてきたのは、化石燃料である。石炭も石油も、地球に降り注ぐ太陽エネルギーが何億年という年月をかけて「熟成」させることで生成されたエネルギー源であるが、人間たちはそれを採り出し、一瞬で燃やしながら「社会を発展」させてきた。

過去の人類史では見られなかったような目覚ましい「経済発展」は、大量生産、大量消費、大量廃棄という一方通行のビジネスモデルによるところも大きい。近年では、そうした反省から、最後のほんの一部だけを「リサイクル」するという動きもあるが、全体としてみれば「一方通行システム」そのものは温存されたままである。教育を通した「意識改革」にも取り組まれているが、「気持ち」や「心がけ」だけで頑張っても、どこかで息切れしてしまうだろう。なぜなら、これは意識の問題ではなく、システムの問題であり、仕組みの問題だからである。

循環型社会という言葉を耳にする機会が増えた。本当にこれを実現させるためには、「まわす気持ちを持つ」だけでは不十分で、「まわす仕組みをつくる」ことこそが重要である。常識を疑い、新しい挑戦をするには勇気がいる。批判もされるし、失敗も多いはずだ。そうであったとしても、「まわし続ける仕組みづくり」をどう実現させるかは、今こそ人びとが創造性を発揮し、挑戦し続ける価値のある問いだと信じている。

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科教授=松本市)