変化を楽しむ心持ち

相変わらず国際社会は流動的である。トランプ大統領のアメリカは、「アメリカファースト」主義を加速させそうだ。米中間の緊張関係も高まっている。フランスでは、ガソリン税引き上げに反対するデモが暴動にまで発展してしまった。金融危機の不安が完全に拭い去れたわけでもない。気候変動も進んでいるようだ。引き続き、世界も日本も「激動の時代」に翻弄されるだろう。これからわれわれが直面するのは、「安定の時代」ではなく「変化の時代」なのである。

人は、基本的に変化を嫌う生き物である。変化には、チャレンジが伴い、チャレンジには失敗がつきものだからである。では、変化の激しい時代に、変化にただ飲み込まれるのではなく、変化を楽しむためにはどうすればよいのだろうか。

心理学的な研究によると、カギはマインドセット(心のあり方)が握っているという。スタンフォード大学の心理学者ドゥエック教授によると、人のマインドセットは二種類に分類される(キャロル・ドゥエック『マインドセット』草思社、2016年)。1つは、しなやかマインドセット(growth mindset)であり、もう1つは、硬直マインドセット(fixed mindset)である。両者の違いは、人の能力は変えることができると考えるか、変えられないと考えるかによって生じている。

興味深いことに、スポーツ、学問、芸術、ビジネスなどあらゆる分野で、なんらかの成果を挙げている人とそうでない人を分けるのは、このマインドセットの違いであると研究の結果明らかになってきたという。もちろん、成功をもたらすのは、人の才能は努力次第で伸ばすことが出来ると信じる「しなやかマインドセット」の方である。

しなやかマインドセットの人は、能力は伸ばせるという世界観のもとに生きているので、成長できないことが失敗だと考える。対して、硬直マインドセットの人は、能力を固定的に考えるので、つまずいたらその時点で失敗だと考えてしまう。チャレンジをして失敗した時、それは成長に必要な要素だと捉えることができるか、その時点でおしまいだと考えるかの違いである。

変化に強く、変化を楽しむことさえできるのは、しなやかマインドセットの持ち主である。そして、マインドセットは、人の努力次第で変えることができる。「変化の時代」を迎えるにあたって、自分のマインドセットを今一度見直してみてはどうだろうか。

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科教授=松本市)