Be the Change!

新年度が始まった。新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界が苦しむ中で、2度目の4月となる。昨年度の4月は、すべての授業をオンラインで提供すると共に、所属学科の看板科目でもある「フィールドワーク」の授業を「フィールドに行くことなしに」どう行うのかなど、前代未聞のチャレンジに翻弄されていた。

あれから1年。世界はまだ苦しみの途上にあるものの、1年前よりはこのウイルスの特徴を理解できるようになってきたし、どんな課題をどのような優先順位で取り組むべきかという整理も進んでいる。もともと世界全体がある種の「転換点」に差しかかっているところでのコロナ対策は、「ポスト・コロナ」の社会をどのようにデザインするかという問いとセットという側面がある。トンネルを抜けた先の社会は、その社会に暮らすすべての人にとっても、周囲を取り巻く自然環境にとっても、よりやさしいものへと変化していることが望まれる。

この1年の経験は、パンデミック以前であれば「そんなことは無理だ」と一蹴されるようなことでも、人々の創意工夫とたゆまぬ努力さえあれば「完璧ではないかもしれないが、やってみれば意外とできる」ことを証明しているように感じる。どうせ変わらなくてはいけないのなら、ただ単に目の前の問題に対処することに満足することなく、あるべき社会に向けて一歩を踏み出した方が良い。

インド独立の父ガンジーのものであるという格言に、「あなたがこのような世の中であって欲しいと思う変化に、(まずは)あなた自身がなりなさい」というものがある。自分自身があるべき世の中に生きているかのように、自分自身が他の人より先に「あるべき変化になる(Be the Change)」というのは、世界中の優れた「チェンジメーカー」に共通する行動様式である。

同様の格言は、イスラームの聖典であるクルアーンの中にも認められる。《人が自らを変えない限り、決してひとびと(の運命)を変えられない》(雷電章:11)。社会をより良い方向に向かって変えていくためには、誰か他人のせいにして文句を言ってもはじまらず、まずは自分自身が「あるべき前例」へと他に先駆けて変化するというのは、普遍的な人類知なのであろう。一人ひとりの変化は小さいものであるかもしれないが、そんな小さな変化こそが、希望ある未来を作るのだと、新年度を迎えるにあたって決意を新たにしている。Be the Change!

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科教授=松本市)