子供の創造性をどう伸ばすのか

「子供の創造性をどう伸ばすのか」『市民タイムス』2017年11月30日。

「学校教育は、創造性を殺してしまっている」。こんな、やや過激なタイトルで講演したのが、イギリス出身の思想家ケン・ロビンソン卿だ。「広める価値のあるアイデア」(Ideas Worth Spreading)の精神で、数多くの名プレゼンテーションを生み出してきたテッド(TED)と呼ばれる会合で行われた彼の講演は、テッド史上、最も多く視聴されたプレゼンテーションの地位を今でも保っている(日本語字幕つきでインターネットで無料視聴可能である)。

彼は、子供たちの持つ創造性を最大限引き出すような教育をしなくてはいけないと訴える。一般的に学校教育の現場では、(特に学年があがるにつれて)国語や算数・数学の時間は増えていくが、逆に音楽や図工の時間は減っていく。しかし、創造性は、識字能力と同じくらいに教育にとって重要なのであり、創造力と識字力は同等に扱われるべきであるというのが彼の主張である。

その理由は、予測不可能性と大きく関係している。特に今の世界は、予測不可能性に満ちあふれている。5年後の世界を誰も正確に言い当てることは出来ないし、今の小学生の子供たちが仕事を始める頃には、われわれが知らない仕事に就く可能性が高いと言われている。

大人たちは、今自分が知っている現実を前提に子供たちに教育を押しつけるのではなく、未来に向かって子供たちの可能性を引き出すような教育をする必要がある。そのためには、子供たちの創造性を年齢と共に殺してしまうのではなく、伸ばし続けてやる必要がある。それが、予測不可能な未来を生き抜く糧となる。

今年になって、仲間たちと松本駅前のビルにて「マツモト・サンデー・マーケット」(www.matsumoto-sunday-market.com)という週末マーケットのイベントを始めるようになった。ミーティングを重ねた末、「学校教育では十分得られない子供の創造性のための刺激」を与え続ける場所を目指すこととした。

月に1回のイベントなので、月ごとにワークショップの内容は異なるが、楽器演奏のワークショップ、プログラミング教室、英語の本の読み聞かせ、アクセサリー作り、壁一面を使ったライブペインティングなど、子供の創造性を刺激する仕掛けを数多く盛り込んでいる。美味しい食事や飲み物も用意してあるので、大人も子供も一日中飽きるまで楽しむことが出来る。市民発の新しい試みを、是非一度試しに来てもらいたい。

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科准教授=松本市)