メディアによる分断を乗り越える

参議院議員選挙が終わった。1人区において「野党共闘」の成果をある程度示した格好である。ただし、投票率は48.8%と奮わず、1995年参院選の44.52%に次ぐ低さだという。投票結果の受け止めは、それぞれであろうが、投票率だけを見ると「盛り上がりに欠けた」選挙だったということになるだろう。

ところが、選挙が終わってみると、「え、そうだったの?」という感想を抱かせるような特異な出来事がこの選挙期間中に起きていたことが、テレビや新聞で報じられることとなった。「台風の目」と評される「れいわ新選組」は、比例区から2議席を獲得したが、当選したうちの1人は難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う候補者で、もう1人は重度身体障害者の候補者であった。また、「れいわ新選組」をめぐっては、4月の立ち上げ以来、市民からの寄付金を4億円以上集めるという、これまでの日本政治では見られなかった快挙も成し遂げていた。

主にテレビや新聞を主要な情報源としている人にとっては、「え、そんなことが起こっていたの?」という驚きかもしれないが、インターネットの世界では選挙期間中から大変な盛り上がりを見せていた。選挙期間中、マスメディアのほとんどは「れいわ新選組」について触れることはなかったが、ネット上では、ある種の「熱気」が日に日に拡大していき、全国各地で街頭演説会を行うたびに、多くの群衆が詰めかけ大変な盛り上がりを見せていた。

つまり、テレビや新聞を通して見えてくる参院選と、ネットを介して見えてくる参院選とでは、随分と景色が異なっていたということである。この分断は、主に世代間で発生している。2018年度版の『情報通信白書』(総務省)によると、「いち早く世の中の出来事を知る」メディアとして、60代の81.6%の人がテレビと回答している一方、20代でテレビと回答する人は27.8%にとどまっている。逆に、20代の69.9%が同じ質問に対してインターネットと回答するのに対して、60代でインターネットと回答する人の割合は10.9%に過ぎない。

この種の分断は、日本の政治をどのような方向に向かわせようとしているのだろうか。いずれにせよ、分断を分断のまま放置してよいということはない。異なるメディアが相互補完的に機能してこそ、民主主義の成熟が促される。私たちは、まだ、インターネット時代の民主主義に不慣れであるままなのかもしれない。

(やまもと・たつや、清泉女子大学文学部地球市民学科教授=松本市)